これまでの活動履歴
極端気象体験ツアー~豪雨について考える編~に参加しました
防災科学技術研究所
豪雨による災害で逃げ遅れ、犠牲になる方が後を絶ちません。
逃げ遅れる大きな要因として人間には「正常性バイアス」が働くことがたびたび指摘されています。これは災害などで自分の身に危険が迫っても「どうせ大丈夫だろう」と危険を小さく見積もってしまうことを言います。
私自身13年前の7.13水害を振り返ると、浸水前に家族と畳を上げたりお米を炊いて食料を準備したり、それなりの準備はしたものの「自分の命に危険がおよぶ」とまでは考えていなかったように思います(結果的に自宅は床下浸水でした)。
豪雨災害で逃げ遅れた方の話を見聞きすると「正常性バイアスが働くとはいえ、川が氾濫するほどの豪雨でなぜ逃げなかったのだろう」「もの凄い降りだろうからさすがに逃げるだろう」という思いが、豪雨を体験していないあるいは遠い昔のことで記憶が薄れている身としては浮かんでしまいます。
今回、防災科学技術研究所主催の極端気象体験ツアーに参加し、世界最大級の大型降雨実験施設で、気象庁が日本で観測した過去最大(1時間あたり300mm)を再現した降雨を体験してきました。
「猛烈な雨」のさらに上の上のそのまた上
過去最大の雨量を体験した率直な感想は「思ったより弱い」でした。
レインコート・長靴・傘のほか、ヘルメットまで着用し「これから観測史上最大の降雨を体験するぞ」と身も心も準備した結果だからかもしれません。
実験では1時間に60mm、180mm、300mmの降雨を順に体験しました。以下がその時撮影した動画です。
1時間あたり60mmの降雨、1時間あたり180mmの降雨、1時間あたり300mmの降雨
60mm/hの雨を気象予報の用語で表すと「非常に激しい雨」、80mm/h以上の雨は「猛烈な雨」と表現されます。それ以上の雨を指し示す予報用語はなく、警報や特別警報が発令されます。
つまり、300mm/hの雨は気象予報で耳にする「猛烈な雨」より何段階も上の強い雨です。
にもかかわらず、体験後は「この雨が本当に人命にかかわる災害を引き起こすのだろうか?」という思いが浮かびました。
体験により改めて感じた早期避難の難しさと克服するための知恵
300mm/hの雨を体験する前は、「観測史上最大の雨はもの凄い降りなので犠牲にならないために早期避難が本当に大事だ」と自信を持って言い切れるようになるのだと予想していました。
体験を終えた今は「猛烈な雨」「観測史上最大」といった用語のインパクトよりも実際の雨は弱く、予報のみで早期の避難行動に繋げることは難しいと感じました。
いつもより強めの雨が降り続いたからといって、そのつど予定をキャンセルして避難するのでは生活は成り立たなくなりますし、危険が迫ってから豪雨のなか避難するのも難儀ですし、また新たな課題を突き付けられた思いがしました。
豪雨体験後は、様々な組織や企業の方々とのワークショップに参加しました。
日本ではまだあまり実践されていない「質問づくりのメソッドQFTを使ったアイデアソン×ハテナソン」という手法を体験しました。
この手法は、まだ誰も明確な答えを持っていない(答えのない)課題を初対面の人同士で、合意形成をしながら見つけ出し、解決に向けて深堀していくもので、まさにこれからの社会を生きるうえで必要な力の育成に繋がると感じました。
豪雨災害から命を守るために、子ども・家庭・地域にどんなアプローチが必要か改めて考える機会となりました。
この記事を書いた人
松井 千明
防災教育でお悩みの先生の声を聴き、一緒に考え、背中を押す黒子を目指し日々勉強中です。普段は中越地震のメモリアル施設である「長岡震災アーカイブセンターきおくみらい」にいます。