これまでの活動履歴

最悪想定ワークショップ

新潟市立寄居中学校

中学生を対象とした防災講座を実施する際、「災害時に中学生ができること」というテーマで取組むことが多々あります。

中学生は、小学生に比べ、知力・体力ともに成長しており、日中も地域内で生活しているため、その地域の住民にとっては非常に期待される存在だからです。

このテーマについてワークショップを行う際には、避難所運営ゲーム(HUG)や防災クロスロードの手法を使うことが多いのですが、

今回はにいがた災害ボランティアネットワークの会田さんと共に企画した、新たな手法による中学1年生対象の講座の様子をご紹介します。

「津波に備えて高い所へ逃げる」…本当にできるのか?

対象は新潟市立寄居中学校の1年生と地域の方々です。寄居中学校は信濃川と関屋分水路に囲まれた場所に位置しています。津波ハザードマップによると、学校そのものは浸水しないものの校区は浸水する箇所もあるとの想定がされています。

まず、生徒の皆さんには地震・津波災害時の身の守り方について事前学習で学んでもらいました。

「海岸・河川付近で地震の揺れを感じたら津波から身を守るために高い所へ逃げる」

東日本大震災以降、沿岸部に住んでいない人も含めほとんどの人がこのことを一般的な知識として当たり前に持つようになりました。しかし、知識として持っていることと、実際に行動することは等号でつなげるでしょうか。

実際の災害時にはさまざまなジレンマが存在します。今回はそんな災害時に起こりうるジレンマを体験し、単なる知識の習得にとどまらない学習を目指しました。

最悪な状況を想定して備えに繋げる

「最悪想定ワークショップ」とは、災害時に起こりうる「最悪」な状況を想定し、段階的にその原因を探り、そうならないための対策を導き出す手法です。

今回は災害発生直後と避難所生活の2つ視点でそれぞれ1問ずつ取り組んでもらいました。

避難所生活における「最悪」な状況として以下の3つを設定しました。

①避難所生活が長くなり死亡者が出た

②トイレの環境が悪く使用できない

③昼間もずっと避難所の中で寝たきりの人がたくさんいる

中学生ならではの視点

③のテーマに取組んだ班では、昼間も寝ている人が多い原因を、

「疲れが取れないから」「体が不自由だから」「眠いから」「とにかくショックだから」と捉え、たくさんの対策を導き出しました。

・寝る場所を探してみる→優先順位の高い人に保健室のベッドを使ってもらう

・寝たきりの人が楽しめるレクをする

・同世代の人同士が一緒に話して楽しめるようにする

・いろんな人と会話をさせる

・ストレス発散場を作ってみる

・相談場所をつくる

・体操をする

・マッサージをする

・しゃべりかける・話し相手になる

・元気な人や若い人がボランティアをする

・若い人とお年寄りなどが協力し合う

・若い人がリーダーシップ性を持つ

などなど…本当にたくさんの対策を考えていました。

物理的な就寝環境を整えること以外に、避難所内で無気力になっている人に対して、人と交流することで気力を取り戻してもらおうとする対策が目立ちました。

ほかにも「授業をする(気持ちを高める)」という対策を考えた生徒もおり、「災害時でも日常と同じく授業をすることによって気持ちを高められるのでは」という意識が中学生ならではで素晴らしいと感心しました。

ワークには住民の方も一緒に議論に加わり、実施後のアンケートでは、

「生徒さんといろいろな意見交換ができてとても良かった。」

「初めは照れて笑ったりしていた子どもたちも本当に真剣に取り組んでいた。」

「子どもたちが大変素直。元気をもらった。」

「次回はこの地域には高齢者が多いことをテーマに何か考えてはどうか」

などの意見が寄せられました。

初めての手法を取入れた講座でしたが、真剣に取り組む様子に私たちも元気をもらいました。ありがとうございました!

この記事を書いた人

千明松井

松井 千明

防災教育でお悩みの先生の声を聴き、一緒に考え、背中を押す黒子を目指し日々勉強中です。普段は中越地震のメモリアル施設である「長岡震災アーカイブセンターきおくみらい」にいます。

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