これまでの活動履歴
防災教育の自校化に向けた学校体制づくり
魚沼市立湯之谷中学校
魚沼市立湯之谷中学校の五十嵐一浩校長先生による、防災教育の自校化に向けた3年間の取組についての講話がきおくみらいにて開催されました。
五十嵐一浩先生は中越地震当時、震源にほど近い長岡市立太田中学校で被災され、その後の地域との復興学習に取り組まれました。
異動された三条市立第四中学校でも地域・小学校と連携した防災教育に取組まれ、豊富な経験をお持ちの先生です。
今回は、現在勤務されている魚沼市立湯之谷中学校における、ゼロから始めた防災教育の学校体制作りについて、3年間の時系列に沿いながら丁寧にお話しいただきました。
目次
- 1. 1年目:意識改革
- 2. 2年目:組織・運営改革
- 3. 3年目:定着・発展支援
- 4. まとめ:トップダウンでは動かない・先生自身が楽しむ
1年目:意識改革
講話に当たってまず五十嵐先生はおっしゃられたのは、「現在当校で行っている防災教育は決して先進的なものではなく、どの学校でも十分に取組める内容」だということでした。
防災教育に限らず、さまざまな事例発表では先進的なものや特徴的なものが取り上げられることが多いなか、「どの学校でもできる」ことを強調されていました。
1年目は教職員の意識改革から始まりました。
旧態依然・形骸化した避難訓練の見直し、県の防災教育プログラムを活用した授業の実施、そして校長先生自らが授業をしてその様子を教職員に公開しました。
これまでは、「避難訓練=防災教育」だった教職員の意識を校長先生自らが授業をして見せることで、防災教育には幅広い可能性があること示されたそうです。
2年目:組織・運営改革
2年目は組織・運営改革を行いました。
県の防災教育プログラムを活用し、防災の授業は行ったものの、職員によって内容にばらつきがでるという反省が出ました。
また、取組むなかで、防災教育に関心を持つ先生が出たため、その先生を防災教育担当に指名したところ、3年間で系統的に共通した防災授業ができるよう、学年ごとに防災教育担当が自然発生的に生まれたそうです。
避難訓練のあり方も、あくまで担当者の主体性を尊重したところ、担当の先生が自ら避難訓練後に30分ほどの授業を行うようになりました。
3年目:定着・発展支援
3年目は定着・発展支援です。
防災授業は行われるようになったものの、時数の確保が難しかったため、年間6コマ7時間目を設定し防災学習の日を年間授業計画に位置付けました。
避難訓練の日時を一部の教職員のみが知る予告なしに変えようという試みもこの年に初めて行われました。
「生徒が混乱する」「ケガの危険性がある」とはじめは多数の職員が反対をしましたが、せっかく提案があったのだからまずはやってみて問題点があれば改善していこうとの考えで実施に至りました。
実施してみたところ、生徒に大きな混乱はなくケガもありませんでした。
前年度までの反省から、3年目は小千谷震災ミュージアムそなえ館の見学、近隣の防災食工場の見学、消防署との連携による消火体験など、体験学習を設定しました。
また、職員によって授業の内容にばらつきが出ることを防ぐために、湯之谷中学校オリジナルの防災教育指導用資料と生徒用の防災学習ノートも防災教育担当の先生を中心に作成されました。
まとめ:トップダウンでは動かない・先生自身が楽しむ
3年間の取組を振り返り、以下の4点をまとめとしてお話しされていました。
①教職員の多忙化が問題となり、業務のスリム化が求められている
後発の防災教育を学校教育に取り込むことは難しい。
②教職員は従前の活動では考えないが、新たな活動に対しては費用対効果を考える。教職員自身が工夫して効果のある活動を組むことで、教職員の意識は自然と向上していく。
③防災教育は全職員が参加できる学習である。したがって全職員を巻き込むために、まずはリーダーとなる職員を育てる必要がある。
④トップダウンではうまくいかない。防災教育の「大切さの確認・やってみせる・やらせる・評価する」というサイクルを繰り返すことで主体的な取組みが生まれてくる。
この記事を書いた人
松井 千明
防災教育でお悩みの先生の声を聴き、一緒に考え、背中を押す黒子を目指し日々勉強中です。普段は中越地震のメモリアル施設である「長岡震災アーカイブセンターきおくみらい」にいます。